無数の製品が溢れるいまの社会では、企業がどのような理念から製品を作り出すか、また製造プロセスを含めた社会への貢献や配慮が、その製品の本質的な価値として大きく問われている。それはまず製品そのものに含まれるアクションとして必要であり、より広域への発信やカスタマーへの共有も重要とされている。企業に求められるこうした社会的な要請は、私たち自身も、より推進される必要があると考えてきた。

同時に、お客さまから寄せられた商品レビューを読んでいくと、私たちからも伝えたいことがあると思うようになっていった。私たちが大切にするこだわりを理解してくださるお客さまと真摯に向き合っていきたい。プロダクトをきっかけにしてコミュニケーションを取ることが、現在のメゾンの在り方かもしれないと。そこで、EPONASを形づくる想いや背景についてご紹介するこのウェブマガジン「STITCH」を昨年12月に立ち上げた。 これから私たちの目線で一つひとつ、綴っていこうと思う。  

 心の奥底から大切にしたいと願うもの

 2023年の年頭に、私たちEPONASについて改めてご紹介したい。 EPONAS（エポナス）は、レザーブランドとして2019年10月にリリースし、AppleWatch用レザーバンドをはじめとするウェアラブル・デバイスアクセサリーや、モバイルレザーバッグ等を製造・販売している。私たちは立ち上げ当初から、環境と人権に配慮した世界中の伝統的な工房とパートナーシップを組み、フェア（公平）で、思いやりを持ち、誠実なプロダクトを創出することを掲げてきた。 

2019年から2023年の現在まで、これから近代史に記されるであろう幾つもの世界の変動を目の当たりにしながら、私たちがブランドとして伝えたいことは変わることなく、より一層、明確になっている。それは「真の豊かさ」について考え、より良いプロダクトをお客さまに届けるということ。「真の豊かさ」と書くと、真とはなにか、豊かさとは、と疑問が湧くだろう。私たちは、自分たちが心の奥底から大切にしたいと願うものを正々堂々「豊かである」と言う。ブランドと商品を通してその豊かさの価値を証明し、プロダクトの作り手や、人の生活に欠かすことのできない文化を守っていく。そしてお客さまとその豊かさを共有し、この循環を継続する。それはとても欲張りなことかもしれないが、自らの意志に沿って望む世界を作っていくのは、私たち自身に他ならない。

EPONAS（エポナス）というブランド名には、古くケルト文化の信仰対象であったEpona（エポナ神）への共感を込めている。その時代に大切な存在であった馬と旅、そして豊穣への信仰を集めた名前は、時代は異なれど、人が生きるための豊かさを求め、その在り方を表現したいという私たちのインスピレーションと繋がったのだ。

【完売御礼】Soelさん コラボ New Year Shimenawa /しめ縄

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現在のメゾンとしての仕事

「真の豊かさ」を表現するEPONASの商品化は、国境を超えたコミュニケーション、そして製造においては伝統の匠の技術が必要だった。私たちは環境への配慮や女性の社会進出等を積極的にすすめている欧州の伝統的工房とパートナーシップを組み、協力しながら商品開発を行ってきた。パートナーの一社は、ドイツの名門タンナー「ペリンガー社」。伝統的な革なめし技法であるシュリンクレザー加工を継承する工房であり、その品質は世界のトップメゾンの製品に選ばれることで広く認知されている。ペリンガー社は、環境に配慮した製造工場で自社の汚水を完全にろ過するシステムを構築するなど、先進的な取り組みも行なっている。 

また、縫製・製造を行うのは欧州にあるレザー加工の専門工房。美しく健やかに働く環境が整えられたこの工房では、女性の職人たちの手により繊細な作業が行われ、EPONASのレザーバンドの曲線やエッジの処理、飾り糸のスティッチの一点一点が生み出されている。この職人たちの技術は、長年にわたって培われてきたものであり、製品の品質を支えている。私たちのMissionのひとつは、尊敬し信頼している工房と職人の「技術の継承」、そして世界トップクラスの品質をもった製品を、適正な価格でお客さまにお届けすることだと考えている。 

使い心地から、修理に至るまで

お客さまにとってより良い製品であるために、使い心地への探求を欠かすことはできない。特に肌に身に着けるレザーバンドは、着用時のフィット感が非常に重要だった。デザインはバンドのバックル側になめらかな曲線をつけ、腕にかかる負担を軽減するようバランスに配慮している。そして素材は、ペリンガー社の技術によって、希少なカーフ（仔牛）を通常のプロセスの7 倍の時間をかけて丁寧になめし、現皮を収縮させ、独特の風合いともっちりふっくらとした手触りとなったシュリンクレザーを採用している。この質感と柔らかさ、耐久性は、他のレザー製品と一線を画すものだ。 

日々の使用によって少しずつ変化が生じた時には、私たちのカスタマーサポートで修理を行うこともできる。ひとつの道具であるからには、傷ついたり、具合が悪くなることがある。だからといってすぐに買い換える必要はない。製品に関するできる限りの修理を承ることも、私たちの考える豊かさのひとつなのだ。 こうしたEPONASの背景について、今後、この「STITCH」 のなかで時間をかけてご紹介していきたいと考えている。